次のトレンドはAiが決める!ECサイトとリアル店舗の双方で活躍するアパレル業界のAi

近年では洋服を含め、たくさんのモノであふれている時代です。人々は十分すぎるほどの服を持っているため、帝国バンクによると中小企業を含む国内のアパレル企業の半数は売り上げが前年を下回り、20%が赤字に陥っているとされています。
しかし、たくさん服を持っているからと言って、もう必要ないと思っている人が多いとか、ファッションに興味がなくなってきているとか、そういうわけではもちろんないのです。アパレル業界の業績不振の原因は、服の流行を捕まえられなくなり、流行をつくれなくなったからに他なりません。
そんな中、アパレル業界は今、Aiの活用に注目しています。Aiを活用して、次のトレンドを捕らえに行こうというのです。一体それはどのような方法なのでしょうか。そして、アパレル業界にAiを導入することにはどのような利点があるのでしょう。今回はそんな疑問について解説していきます。
目次
アパレル業界でAiはどのように活用されるのか
アパレル業界でのAi活用は、リアル店舗での活用とECサイトでの活用の2パターンが考えられます。それぞれの活用法を別々に見ていきましょう。
リアル店舗でのAi活用
earth music&ecologyなどの若い世代の女性向けファッションブランドを展開しているストライプインターナショナルでは、2019年度の事業計画の目玉にAiのデータ分析強化による仕入高の大幅削減を掲げました。2018年に、同社主力ブランドのearth music&ecologyでAiによる在庫最適化の検証を実施したところ、値引き率が大幅に改善され、利益が2倍に跳ね上がったといいます。
この結果を受けて、2019年度では全ブランドでAiによる需要予測や発注の最適化、値引きの最適化を実施し、仕入高のさらなる削減を目指しているということです。
これにより、無駄な在庫を持たなくなることで、値引き率を抑制し、粗利の向上を見込むことができるようになります。
更には、在庫管理にAiを活用することで、『何が売れている』『何が売れていない』というのがはっきりデータとして可視化されるようになりますので、お客の購買傾向などを分析しながらトレンドをつかむことも可能になるでしょう。
ECサイトでのAi活用
ECサイト内では、WEB接客やAiチャットボットの機能を搭載することで、顧客のサイト閲覧履歴や購入履歴をもと需要予測や顧客対応に生かすことができるようになります。
それに加えて、衣料品の試着サービスやパーソナルスタイリングサービスなどの特色あるサービス群も取り揃えることで、顧客の利便性の向上や満足度の向上につながることも期待できるとされています。
このように、リアル店舗で活用されるAiが蓄積したデータとECサイトで蓄積したデータをもとに、更に効果的な発注を行うことができたり、精密な需要予測を行うことができるようになるということです。
Aiで利益率が10%上がる?
続いては実際、Aiをアパレル業界に活用したところでどのような結果が得られるのかというところについて解説していきます。
先ほどご紹介したAi活用方法においてもそうですが、Aiが分析とは、具体的にどんな分析をしているのかというと、主に下記の2点です。
①時系列分析
②画像認識分析
①時系列分析
まず、時系列分析とは、過去から現在に至るまでの流行の動きの法則を統計的に導き出すということです。その法則をAiが発見することで現状の分析とかけ合わせながら次に何が売れるかの分析ができます。
というのも、感性には『法則性』があるからです。『この色の服を着たい』といったことや、『こんな形の服を着たい』という要望はいずれも感性から生まれます。しかし、こうした感性はきわめて複雑で、人間にはその感性の法則を理解することができません。
しかし、Aiは、与えた情報を片っ端から処理して分析をしていきますので、Aiに与える情報が多ければ多いほど、プロのスタイリストやアパレル会社んおバイヤーでも見落としがちな法則を見つけることができます。
例えば、『2年前に〇が流行り、昨年は◇が流行ったので、今年は△が流行る』と予測できるようになるということです。
②画像認識分析
もう一つ、画像認識についてです。画像認識とは今までの記事でも何度か触れたことがありましたが、いわゆるAiに意味のある画像を見せるとAiがその画像の意味を理解することができる能力のことをさします。
これがどのようにアパレル業界で役立つかというところですが、例えば過去に流行したジャケットの写真と売れ残ったジャケットの写真を大量にAiに読み込ませることでAiはジャケット写真の時系列分析を行い、次流行るジャケットのデザインを予想することができます。
そのうえで、デザイナーがAiの予想を参考にジャケットをデザインすれば流行を先取したジャケットを作ることができるといったプロセスが完成されます。
これらの方法をアパレルの需要予測に用い、それが示すとおりに販売を行ったところ、驚くべきことに、あるアパレル企業では実際に的中率5%、利益率が10%も改善されたのです。
今後のトレンド作りはAiが
従来『人の力』で行う需要予測では過去に『ジャケットがよく売れた』という事実まではわかりましたが、それが『なぜ売れたのか』という理由は曖昧でした。
デザイナーやクリエイターと呼ばれる人々が長年の経験と勧で次のトレンドを定義付けていたわけですが、それは人の感覚や予想の域を出ませんし、能力によってばらつきもあります。『当たる年』『当たらない年』も当然出てくるでしょう。ところがAiは『商品が売れている客観的な因果関係』を照明することができるのです。
ここまでにご説明してきたリアル店舗でのデータ分析、ECサイトでのデータ分析、画像認識、時系列分析など、Aiを駆使することで今後はファッションの流行をAiが捕らえることができるようになるのではないでしょうか。
すると、アパレル業界が今後大きく変化していくことは間違いありません。
まとめ
このようなアパレル業界におけるAiの活用は5年後10年後の話ではと思っている方も少なくないかもしれませんが、すでに『売れ筋』商品を先読みするための取り組みにAiを駆使したベンチャー企業が参入してきています。
こうしたアパレルベンチャー企業をはじめ、アパレル業界が挑戦し始めているAi化は大量のデータを集めて顧客の感性を分析することにほかなりません。これまで感性は一個人特有のモノであってコンピューターでの分析は難しいものであると考えられてきましたが、ビッグデータとAiがあればコンピューターは感性に急接近することができるようになります。
要するに、Aiが人間の感性をつかんでしまえばほぼ確実に流行を捕らえた売れる服を作ることができるということです。
今後はAiを活用することでアパレル業界は大きく変化し、人々のファッションセンスもますます磨かれることにつながるのではないでしょうか。