Aiが人間を管理する未来も近い?スーパーシティ法案で日本は今後どう変わるのか

Aiは防犯システムの強化はもちろんのこと、自動運転技術の向上をさらに加速させたり、人間にかわって働くことができたりするとして、その技術は今や様々な業界が注目しています。また、企業だけでなくAiの活用は、グーグルホームなどをはじめとし、一般家庭にも徐々に浸透してきました。こうしたAiによってスマート化された生活環境を『スマートシティ』と呼ばれることもあり、一度は耳にしたことがある方も多いでしょう。

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そんな中、先日参院本会議において『スーパーシティ法』なるものが成立されました。Aiなどの最先端技術をもってして物流、医療、教育などあらゆる分野で相乗効果を生み出すことが目的とされるのが同法案です。

SNS上などでは『スーパーシティ法案に抗議します』などといったハッシュタグも盛んに利用され賛否両論があるようですが、わざわざ『スマートシティ』ではなく『スーパーシティ』と名乗ったこの法案の可決・成立によって日本は今後どのように変化していくのでしょうか。

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スーパーシティ法とは

Aiやビッグデータなどの先端技術を活用し、地域課題の解決を図る都市『スーパーシティ』構想を実現するための国家戦略特別区域法の改正案が2020年5月27日、参院本会議で可決し、成立しました。

このスーパーシティ法案については、車の自動運転や遠隔医療などを取り入れたまちづくりを通じ高齢化社会や人手不足の解決につなげていくとされています。また、2019年9月には自治体などからアイデアの募集を始め、既に55団体がアイデアを提出しました。様々な業界から集まったアイデアを実現すべく、今後は各省庁の検討が同時に進むように支援していくということです。

では、ここからはスーパーシティ法案の目的、各地域の自治体の動きについて解説していきます。

スーパーシティ法の目的

スーパーシティ法の主な目的は、Aiおよびビッグデータを活用することで、暮らしに直結する複数の分野にまたがってデジタル化を推進し『2030年の暮らし』を先取りすることです。要は、2030年頃の予定であった近未来の実現を、一刻も早い社会問題の解決のため早めようではないかということであると説明すればわかりやすいでしょうか。これにより、社会の在り方を根本から変えるような都市設計の動きがなされていくでしょう。

具体的には、①移動、②物流、③支払い、④行政、⑤医療・介護、⑥教育、⑦エネルギー・水、⑧環境・ゴミ、⑨防犯、⑩防災・安全 など生活にかかわるすべての事項においてカバーするとし、2030年頃に実現される未来社会での生活を加速実現するとされています。スーパーシティ法の可決によるそれぞれの分野の変化点については後述いたします。

スーパーシティ法における自治体の支援

ただ、スーパーシティ法案の内容を実現するには複数の省庁にまたがる規制緩和が必要です。例えばボランティアドライバーの活用は国土交通省、遠隔医療や遠隔からの服薬指導は厚生労働省といった具合に各省庁との調整により様々な修正が生じた結果、当初計画案を断念したり、大幅な変更を迫られたりするケースが少なくありません。

また、Ai導入やビッグデータの活用については、それらを推進するために補助金が必要であったり個人情報の取り扱いについてのマニュアルが別途必要であったりするでしょう。スーパーシティ化を推進するにあたっては今後ブラッシュアップされ、各省庁や各自治体への支援の呼びかけが行われていくはずです。

スーパーシティ法で何が変化するのか

また、スーパーシティ法が成立したことで、Aiを活用する企業や団体が乱立し、人間の活動領域を狭めていくのではないか、またAiに人間が管理されるようになってしまうのではないかと不安に思われている方もいらっしゃるでしょう。

ここからは、スーパーシティ法が可決したことで、日本は今後どのような未来に向かっていっているのかという点について解説していきます。

自動運転化の加速

まずは自動運転技術がますます加速するであろうということです。実は自動運転には5Gなどの通信システムによる遠隔操作と合わせてAi技術が必要不可欠であるといわれています。実際に、5Gを利用して身の回りの様々なモノがインターネットに接続されるようになることで、セキュリティ面などの理由から、防犯カメラも更に高性能になっていくと言われています。当初では2030年ごろに完全なる自動運転車が実現するとされておりましたが、スーパーシティ法の可決により、完全なる自動運転車の実現は2030年よりも早くなるかもしれません。

遠隔医療、遠隔教育

現在もコロナウイルスの感染症対策としてZOOMなどのビデオ会議を利用した遠隔医療や遠隔教育が推進されておりますが、Aiやビッグデータなどの最先端技術を利活用することでさらに『遠隔技術』が向上していくことが予想できます。また、過疎地における遠隔技術の浸透においても自治体の支援や住民の参画が必要になりますが、法案が成立していることで住民等の同意を得やすくなるなどのメリットもあげられるでしょう。

無人店舗の実現

近年ではペイペイが大規模なキャンペーンを実施したことから、急速に『QR決済』などのキャッシュレス決済が浸透しました。こうしたキャッシュレス決済は無人店舗の実現にも応用できるとされ、お客側は無人店舗で買い物をし、スマホにキャッシュを登録しておくだけでいわばお店を通り抜けるだけで買い物が完了するようになります。

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ドローン配送

そして、高齢化などと並んで問題と化しているものの一つに『再配達問題』があげられます。こうした配達業者が抱える問題についてもAiを搭載したドローンで無人配送ができるようになれば、再配達問題も解決に導くことができるようになるとされています。

しかし、現時点での日本の法律では自由にドローン等を飛ばすことができないようになっているので、今回のスーパーシティ法の可決により、規制緩和がされていくことでしょう。

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介護等のスマート化

先ほど高齢化が社会問題の一つであると述べましたが、それと合わせて高齢者の認知症、および介護なども社会問題の一つです。近年では老々介護なども珍しい話題ではなくなってきました。

こうした問題にアプロ―チできるのがスーパーシティ法です。というのも、Aiが被介護者の体調を管理したり、データを収集することができるようになれば、介護者は一日中付きっ切りで介護にあたる必要がなくなるのです。

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スーパーシティ法の問題点

このように、2030年頃になるであろうとされていた近未来を少し早めようという法案が『スーパーシティ法』です。Ai技術によって『いつかこうなるであろう』と予想されていた未来がすぐそこまで来ているといっても過言ではないでしょう。

しかし、この『スーパーシティ法』にはいくつかの問題点があります。

それは国や自治体、警察、病院などが別々に持っている個人情報など、情報の垣根が壊され、一元化されてしまう可能性があるということが1つ、中には内容があいまいで議論十分であるという意見もありました。著名人による問題提起にとどまらず、SNS上などでも様々な議論が繰り広げられ、一部では『スーパーシティ法に抗議します』などといったハッシュタグまで生まれました。

こうした問題があげられた理由として予測できるのは、『Aiが人間をすべて管理する世の中になってしまうのでは』という不安点です。

というのも、Aiが人間のスコアを表示し、そのスコアに応じてお金を借りたり買い物をしたりすることができるシステムが始まってきているという話題について以前のコラムで触れたことがありました。実際にこの『スコア化』というのは人口の多い中国ではスマート化の一環として始まっております。

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ただ、個々の情報を一元管理ともなる『スコア化』では、いらぬ場所でいらぬ情報を漏らしてしまうことになりかねないということが問題提起されているわけです。これまでの日本では個人情報の観点から様々な場面で個人情報のやり取りをすることは認められておらず、中国のように一元管理することはできませんでした。しかし、今後このスーパーシティ法によって、一元管理できないことによる障害が起きった場合、Aiが人間を管理する世の中を認めてしまうことにつながりかねないと懸念されているわけです。

更に、スマートシティ化ではなく『スーパーシティ化』であることによってあらゆる事柄においてAiに頼ってしまえば、いずれAiとの共存がうまくいかなくなる可能性もあるかもしれません。

ですから、あくまでも『スーパーシティ法』は人間の暮らしを住みやすくするための法律であり、人間に任せること、Aiに任せることなどの棲み分けをうまくしていく必要があるといえるでしょう。

まとめ

本記事では先日29日に可決した『スーパーシティ法案』について解説いたしました。要点をまとめると、スーパーシティ法とは、2030年頃に実現される予定であった『未来構想』を、Aiおよびビッグデータを活用して加速させるものであり、各社会問題を解決させるために可決されたものであるということです。

様々な意見があるかもしれませんが、決してAiの街づくりをするための法案ではありません。人間が暮らしやすい街を作るため、Aiと人間がうまく共存するための法案です。今後、各省庁や自治体等の支援策がブラッシュアップされれば、Aiを導入したいと考えている企業等も非常に導入のハードルが下がっていくことでしょう。

Aiに任せるところ、人間が行うべきところ、それぞれ最適な棲み分けをしていくことが大切です。