Aiの活用で無人店舗が実現する?

近年では急速なグローバル化や生活のスマート化などの影響もあり、多くの店舗でキャッシュレス決済の導入が進んできました。また、現在日本は高齢化社会に向かっていて、慢性的な人手不足に陥っている業界が出てきており、特に飲食業界や小売業界は顕著です。そんな中、近年では、Aiやキャッシュレス決済のノウハウを利用した無人店舗がコンビニ等を中心に普及していく流れが広がってきています。

このように、ますます便利になっていく世の中を支える基盤ともなっているのがAiなわけですが、一体Aiは無人店舗の実現においてどのような役割を担っているのでしょうか。

無人店舗とは

そもそも無人店舗とは、Aiやセルフレジ等を利用してレジやその他の業務を担う従業員をなくした店舗のことをさします。

この無人店舗は、Aiを利用して消費者の購買データを集めることが出来たり、人件費を抑えることができたりするとして期待されており、現在徐々に活用が広がってきているところです。

実際に、2019年8月23日から半年間、横浜市にあるローソン氷取沢町店が深夜帯(午前0時〜午前5時)に無人店舗化し、スマート店舗の営業実験を行なっています。
また、JR赤羽駅のキオスクでも、入口のスキャナにSuica(交通IC)をかざすとドアが開いて入店できるようになり、店内で商品を選んで取りながら進み、出口で再度Suicaをかざせば購入完了、退店できる仕組みの無人店舗を2か月間実験的に導入しました。

完全なる無人化ではなく、セルフレジなどを導入したり、短期間で実験的に実施したりしながら徐々に無人店舗化を進めている店舗が多いようです。

データ管理も防犯対策もAiカメラで可能に

無人店舗を実現するにあたって、防犯対策の面や、データ管理の面から切っても切れない関係にあるのがAiカメラです。

Aiカメラにできること

Aiカメラとは、その名の通りAi技術を搭載したカメラのことです。身近なところで言えば、iPhoneの顔認証や一眼レフカメラのスマイルシャッターなどでしょうか。
このように、Aiカメラは画像や映像からデータを分析したり、予測したりすることが可能です。

更にAiの画像解析技術は近年劇的に進化しており、多数の対象物が映し出された画像・映像の中から高精度で事故や犯罪行動パターンをリアルタイムで自動検出できるようになっています。また、人の動線をトラッキングしたり、顧客行動データの取得・分析して来店客の年代・性別、立ち寄り率、リピート率といった顧客データを可視化したりすることも可能です。

従来は記録のためだけに利用されていた防犯カメラを消費者のデータ管理や、在庫の管理としても活用できるようになったことから、無人店舗の実現においては、このAiカメラが必須となってきているといえます。

Aiカメラは1つの店舗に何台くらい必要?

例えば、九州を地盤に全国244店舗を展開しているトライアルグループは、トライアル新宮店において、店舗分析等のためにAiカメラ1500台を導入しています。
同店では約3600坪の店舗面積に対して、1500台のAIカメラを導入していることから、平均的に1坪あたり2.4台ほどのAiカメラが設置されていることがわかります。
コンビニの面積は大体50~60坪ほどですので、コンビニを例に例えると、だいたい1店舗につき100~150台ほどのAiカメラが必要ということになります。

Aiを活用したスマートレジカート

Aiを搭載したレジカートは商品のスキャンから支払いまですべて一台でできる優れモノです。このようなAiを搭載したレジカートは現在アメリカを中心に開発が行われています。

このスマートカートは、商品を入れるカゴとタブレットが一体化しており、商品をカゴに追加するごとにAiが商品を認識して、金額がタブレットに表示されるという仕組みになっています。従来のカートと違う点は、『かごに入れる際に商品がスキャンされる』というところです。

生産もカートに取り付けられているタブレットでそのまま行うことができますので、レジに並ばずにそのまま店を出ることができます。

AIによる店舗案内

スーパーマーケットやコンビニ等は、生活をするにあたって多くの人が日常的に利用する施設の1つです。増え続ける利用者に対して、人手不足が課題となっている昨今、今後活用が広がると予想されているのが『Aiによる店舗案内』です。

例えば、スーパーで働いたことのある方はご経験があるかもしれませんが、商品を並べている途中にお客から『マヨネーズはどこにありますか?』などと質問を受けたり『トイレはどこですか?』と聞かれることがあります。

その際、従業員はそれまでしていた作業の手を止めて接客、案内をしなければなりません。このように、発生頻度が高く、煩雑な内容も多い一次対応を自動化できれば、従業員も本来の業務に集中しやすくなり、労働生産性の向上も見込めるようになります。

また、このAiによる案内サービスは2020年に開催予定の東京オリンピックにおける外国人観光客の施設案内などでの利用も検討されています。

インバウンド客も年々増えてきている中、スーパーなどにおいても多言語に対応したAiを活用することで、来店客との柔軟なコミュニケーションが期待できるとともに、業務効率化にもつながるといえるでしょう。

無人店舗Amazon GOに学ぶ今後の可能性

『AmazonGO』は2018年1月にシアトルに1号店をオープンし、その後シカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコなど15店舗で展開をしている無人コンビニです。

AmazonGOは店内に入る前に専用のアプリのダウンロードと登録が必要です。これはクレジットカードなどの情報と請求先住所などを登録しておくもので、これを利用することによりレジに並ばずに決済を済ませることができるシステムとなっています。

もし、来店して商品をそのままバッグに入れて持ち去っても、アプリでしっかり請求されるため、間引きになることはありません。

例えば、駅で電車に乗るときのことを思い浮かべてみて下さい。一昔前までは券売機に並んで切符を購入して、それを機械へ差込み、出てきた切符をとって電車に乗り込むというのが普通でした。それが今では、SuicaやICOCAなどのICカードを利用することで、券売機に並ぶストレスなどが大幅に解消されました。

これと同じように、AmazonGOはかごに入れられた商品をAiが認識することによって退店ゲートを徹だけで決済が完了し、行列を防ぐことに成功したのです。

こうした無人会計は、天井に設置された数えきれないほどのAiカメラがそれの一端を実現させています。また、Ai技術による商品棚から通路までの監視はもちろんのこと、商品棚の重さや音を観測するセンサーやマイクを配置することで、『誰がどの商品を持っているか』を把握することができるようになっています。

これは在庫管理などにも活用され、どこの棚の何がなくなっている、減ってきているということをAiが感知し、スタッフに報告することで、商品ロスを防いだり、在庫不足を防いだりすることが可能です。

現在AmazonGOはアメリカの4都市での展開のみですが、今後はキャッシュレス決済の普及や、人材不足などの課題解決に向けても、このような無人店舗は広がっていくことが予想されます。

まとめ

まだ日本の無人店舗は実験段階であり、AmazonGOのように本格的な稼働には至っていませんが、各社がAiを活用した実験を着実に進めていっています。万引きなどの防犯関連事項や、責任の所在などが課題として残っている中、今後は通信技術の発達も関与し、Aiの技術は飛躍的に向上することが予想されています。無人化における課題もAiで解決することは意外にも容易な事かもしれません。

今後は、AIなど最新技術を駆使した無人店舗展開の主導権を、どの企業が握っていくかが見どころとなりそうです。