Aiで介護送迎車が変わる!第3の交通網「福祉Mover」とは

日本では「少子高齢化」や「人口減少」に伴い、高齢者による交通弱者が増えています。その原因の一つに車の免許返納が行われることで、これまで生活の足となっていた車に乗ることができなくなり、生活事態に影響が出てくる方も少なくありません。
そうした中、高齢者による交通弱者を支援しようと通所介護施設の送迎車やAiによる配車システムを使った、相乗りサービス「福祉Mover」の有効性を調べる実証実験が群馬県外の5市2町で行われています。このサービスは公共交通機関に代わる第3の交通網となるのか注目されているわけですが、「福祉Mover」とは一体どのようなものなのでしょうか。
介護送迎時における現状の課題
まずは、介護スタッフ側の視点から介護送迎時における現状の課題を把握しておきます。
概要でも触れたように、人口減少に伴い介護の現場においても人手不足が深刻化しており、中でも、介護施設を利用する利用者の送迎においては様々な問題が発生しているようです。
送迎計画の非効率問題
デイサービスに通所されている方の送迎や、急な体調不良によって通常は送迎が必要のない方でも場合によってはその日だけ必要になるなど、予定変更は日常茶飯事です。そのため、予定していたルートを大幅にずれたり、人数や介護者に伴った大きさの車を用意できなかったり、と一度で送迎できずにその後の業務に支障が出ることもしばしば起きています。一方では、介護職員の人手不足がさらに輪をかけ日々の業務においても非効率な部分が生じ、ストレスへと変わってきている介護者も多く存在しているのが現状です。
・時間が限定された送迎業務のストレス
前述の送迎計画の非効率問題と重複しますが、介護業界で働く方にとって最もストレスとなるのが、送迎業務とも言われています。それは、「時間通りに利用者を迎えに行かなければならない」「道を覚えなければならない」「長く車を停めておけないような状況で、利用者の介助に時間をとられてしまう」などといった焦りから事故を招くケースが出てきているからです。
以上の2つの課題は介護スタッフにとっては切実な問題でもあります。ここへAiを導入することで介護送迎車はどのように変わるのでしょう。
次項からは、本題の「福祉Mover」の紹介や利用者・事業者側両者におけるメリットも併せて言及致します。
Aiで法人の垣根を超える・第3の交通網出現
では、早速Aiを導入した「福祉Mover」をご紹介していきます。
・「福祉Mover」とは
「福祉Mover」とは、Aiによる配車システムを利用した交通弱者を支援する相乗りサービスです。施設への送迎の他、ちょっとした買い物にも利用できるので活動の幅も広がりますし、スマホが苦手な方や利用されていない方は、コールセンターでの受付も可能です。
引用元:第3の交通網 SAVS×福祉Mover (spu.ac.jp)
・サービス対象者
事業対象者・要支援・要介護を受けている交通弱者のみ
*2021年2月までは実験段階のため、無料で運行しており対象者の幅にも違いがあります。
・サービスの利用方法や仕組み
スマホアプリをインストールし、利用者のよく行く場所や自宅を事前に登録(5カ所まで可能)します。その中から目的地を選択すると、Aiが相乗り後の経路や所要時間を考慮し最適な車両に配車を指示、迎えが来る仕組みです。万が一指定した時間(10分以上)に間に合わない場合でも再度時間をおいて申し込むことが可能であり、体が不自由な方でも乗降の介助はサービスに含まれていますので安心して利用することができます。
引用元:第3の交通網 SAVS×福祉Mover (spu.ac.jp)
・Aiによる最適ルート検索で効率的
例えば、利用者側が買い物先から次の目的地に移動したい場合、スマホアプリやコールセンターを通して予約を入れると、付近を走行している車両に連絡が入り、連絡を受けた車両が待ち合わせ場所まで迎えに行きます。
付近を走行している車両についでに相乗りさせるシステムを取り入れるだけで、わざわざ他の車両が迎えに行くこともなく、事業者側・利用者側どちらにとっても効率的です。
・コロナ禍でもAiの管理システムで安心
移動の際に心配になるのが、コロナによる感染です。しかし、Aiによる乗車状況管理システムによってどこで誰が何時に乗車したのか一目で確認できるため、すぐに感染経路を追うことができるので、万が一の際にも役立ちます。
Aiによる「福祉Morver」で期待されるメリット
「福祉Mover」によって期待されるメリットとはどのようなものがあるのか、利用者側・事業者側それぞれのメリットをみてみましょう。
・利用者側
・活動の幅が広がる
・外出することで認知症・廃用症候群の予防に繋がる
・孤立を防ぐことができる
・スマホお助け隊によるアプリ操作の指導
交通弱者となると活動の幅が狭まり、社会との孤立を感じそのまま鬱状態や認知症あるいは、廃用症候群になるリスクも十分に考えられます。
お年寄りが手軽に活用できる交通サービスがあることで、お年寄り自ら活動の幅を広げることにも繋がり、最終的には地域活性化にも貢献するでしょう。
さらに、このサービスを利用するにあたって、「スマホで予約をしてみたいけど使い方が分からない。」といった方には、アプリの使い方などを教えてくれるサービスもあり、アプリ内容も項目が最小限に設定されているので初めての方でも安心して取り入れることができます。
・事業者側
・Aiによるルート検索で目的地に迷うことがなく最短ルートで走行
・Aiで送迎計画表をいつでも可視化
・Aiによる管理画面で全送迎車の位置情報が分かる
・Aiによる個人管理でヒューマンエラーを防ぐ
事業者側にとっては、事故を起こすことなく安全に送り届けることが一番の業務にあたりますが、それに加え、介護送迎時における現状の課題でも述べたように時間内に送り届けるということはなかなか難しい業務です。しかし、Aiによる最適ルート表示によって、バラバラな待ち合わせ場所・時間に対しても常に最適なルート、最適な時間を設定してくれるので迷うことなく落ち着いて運転をすることが可能です。また、初めての利用者宅でもあらかじめデータ設定がされているので、Aiによる細かい指示が出され誰でも目的地に到着できるよう設定されています。
このように、Aiを導入した「福祉Mover」を利用することで、利用者側・事業者側どちらにもメリットが多く、今後本格的に導入が開始されることで更なるメリットが生まれることが期待されます。
過疎地域高齢者にも有効的、Aiで交通手段確保
過疎化地域では車がない生活がままならないため、車を持っている割合も多く、そうした場合高齢者になっても運転を継続している方も多くいる中、一方で運転免許を返納した方にとっては交通手段確保が大きな問題となってきます。
・過疎化地域の現況
総務省の「過疎対策と現状と課題」によると、平成29年4月1日時点での過疎関係市町村の数は817にのぼり、これは全国の市町村数1718あるうちの47.6%にあたります。過疎化が進むことによって「商店やスーパーの閉鎖」「公共交通の利便性の低下」などの加速が起こり、地域住民の生活水準の維持ができなくなる地域も少なくない状況です。
・Aiの導入は過疎化のインフラにも有効的
こうした中、高齢者の暮らしに必要な移動手段をどう確保するかが課題となっています。特に過疎化が進んだ地域では、人口の減少に伴いバスや電車などの公共機関利用者が減り廃止や縮小が行われています。自治体が運行費を補助したり、公共交通の空白地でマインドバスを走らせたりと、交通弱者の移動手段を確保するも財政負担が年々増えてきている状況です。
しかし、こうした過疎地域にもデイサービスや福祉車両は存在し、本来は、介護送迎者のみに使用されてた車両を地域のインフラとして活用する、第3の交通網「福祉Mover」を活用することで、多くの高齢者の心身機能低下防止や商店街の活性化としても役立つことが期待されます。
まとめ
第3の交通網「福祉Mover」のご紹介と、その他高齢者による交通弱者問題について言及して参りました。「少子高齢化」や「人口減少」に伴い高齢者による交通弱者が増えている中、Aiによる新しいシステムが生活の足となり、高齢者の活動の幅を広げています。現在は実証実験段階ですが、2020年10月の段階で20以上の介護施設(車両は約220台)が参加し、約400人の高齢者がライフラインとしての活用が広がってきました。
免許を返納したあとも、安心して生活が送れる安心は大きいでしょうし、Aiを導入したことで、これまでに見えてこなかった部分においても更なる改善に今後も役立てられることでしょう。
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