AIでマスク着用を判定【新型コロナ対策】

新型コロナウイルスの感染拡大により、感染症予防対策として世界的にマスクの着用が推奨されています。同時にマスクを着用したままでも顔認証できるサービスが増加しているのをご存じでしょうか。さらにAIがマスク着用を判定できるサービスも登場しています。コロナ対策としてマスク着用が推奨される中で、マスク着用判定システムへの注目が高まっています。一方で十分な検証がなされないまま普及が進められることへの、懸念の声も挙がっています。
AIのマスク着用判定システムは、どのような仕組みになっているのでしょうか。またどの程度の信憑性があるのでしょうか。今回は、機械学習(ディープラーニング)とAIを活用した、マスク着用判定システムについてお伝えしていきます。
目次
AIによるマスク着用判定システム
2020年、コロナウイルスの世界的な流行を背景に、飛沫感染を防止するマスク着用が世界中で見られるようになりました。マスクは咳エチケットとして他者に感染をさせないという側面と、自分にウイルスが感染しないよう予防する効果があります。コロナ禍収束の目途が立たない中で、非接触による顔認証にも注目が集まっています。従来の顔認証システムを活用し、AIによるマスク着用システムを同様する試みが、世界各地で広がっているのです。
ディープラーニングとは
機械学習(ディープラーニング)とは、音声認識・画像特定・予測など、従来人間が行っていたタスクをコンピューターに学習させる手法です。ディープラーニングは、人間が編成して定義済みのデータを数式にかけるだけではありません。データに関する基礎的なパラメーター設定を行うだけで、その後はパターン認識を通してコンピューター自身に学習させることも可能です。ディープラーニングを行うことにより、人の目では判定が難しい細かな事柄も、検出して判定できるようになるでしょう。
画像認識技術について
現代では空港、オフィス、金融機関などの入退出時など、さまざまなシーンで顔認証システムの導入が進められています。2012年にディープラーニングを利用した画像認識が成功したことを契機に、世界中で注目が高まり、普及が広がりました。画像認識はカメラなどで撮影されたデジタル画像から、人の顔などを自動的に識別できるシステムです。画像内から顔と思われる部分を検出し、データベースと照合することで識別が行われます。
これまではセキュリティや犯罪捜査といった分野で、導入が進められ活用されていました。この画像認識技術が、コロナ禍においては本人確認だけではなく、マスク着用判定にも活用する動きが見られています。画像認識技術を活用したマスク着用判定システムでは、マスクをつけている人、マスクをつけていない人を識別できるようになっています。あらゆる色や形のマスクを検出し、混雑状況でのマスク着用していない人を発見してくれるでしょう。
マスク着用判定によるメリット
マスク着用には、本人の感染予防だけではなく、人にウイルスを移さない為の対策としても推奨されています。特に人混みや建物内などは、そうでない場所に比べると感染リスクが高いとされており、マスク着用が義務付けられているケースも存在します。マスク着用判定システムは、人混みの中でマスク未着用の人を検知できるので、着用を促せるようになります。
またマスクをつけずに建物内などに侵入する人を未然に検知することも可能です。さらにマスクを忘れて外出するといったことにも対応できるので、あらゆる防止につながるでしょう。
マスク着用判定のデメリット
顔認識技術は、顔の一部が隠れている場合の認識精度はまだまだ不十分な状態です。たとえばAppleが提供するiPhoneの顔認証「Face ID」は、コロナウイルス対策のマスク着用が一般的になった直後、一時期きちんとした判定ができなくなっていました。顔半分がマスクに覆われている状態では、本人だと認識できなかったようです。多くのユーザーから要望の声が届けられたこともあり、現在は少し改良されて使いやすくなっています。新しいFace IDでは、マスクを外さなくても本人確認が行えるようになり、ロック解除しやすくなりました。それでもマスク未着用時に比べると時間や手間がかかってしまいます。AIによる誤判定、誤認識がマスク着用判定システムの大きな課題と言えるでしょう。
AIによる画像認識技術の信用度は
AIのディープラーニングは、回答の根拠が十分に説明されないケースも少なからずあります。現在普及しているAI技術の大半は、AIにデータを学習させることで、新しい要素について判断できるという仕組みになっています。その判断は極めて直感的なものが多く、結論に辿り着くまでの根拠の説明ができていない場合も少なくありません。そのためAIから根拠も示されずに提示された回答に、納得できないという人も存在します。
また誤判定の問題も無視できません。AIの画像認証は、人間であれば見分けられる画像を見分けられない場合もあります。画像の色で判断するAIの場合、肌の色に近い服を誤って肌と認定してしまう可能性もあるのです。
たとえばベージュ色かつ、輪郭にフィットするマスクをつけている人が、マスクを着用していないと判断される恐れもあるでしょう。コロナ流行下においては、より実用的なマスク着用時における顔認識システムの検証が求められています。
AIによる画像認証システムは人の負担を軽減してくれますが、まだまだ不十分であるという点も踏まえておいてください。最終的な細かい確認は、人の目を入れてチェックを行うようにすると、より万全に対応できるでしょう。
AIによるマスク着用判定システムの導入場所
日本国内でもAIによるマスク着用判定システムの導入が進められています。たとえばソフトバンク株式会社と、同社子会社である日本コンピュータービジョン(JCV)は、「AI検温ソリューションSenseThunder」というシステムを提供しています。
※AI温度検知ソリューション「SenseThunder」
https://www.softbank.jp/biz/ai/face_thermal_imaging/
マスク着用したままでも顔認証・体温測定が可能で、マスク有無の判定も行えます。東京ドーム、TOHOシネマズ、イオンモールなどさまざまな場所で導入が進められているので、実際に目にした人もいるかもしれませんね。一方で実際に使用されている事例を見てみると、体温測定がメインに使用されているようです。
※AI検温ソリューションをイオンモールへ納入(2020年5月20日)
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200520_02/
※AI検温ソリューションをTOHOシネマズへ納入(2020年6月2日)
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200602_01/
※AI温度検知ソリューションを株式会社東京ドームへ納入(2020年7月13日)
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20200713_02/
また関西デジタルソフト株式会社でも、2020年10月1日よりAIによるマスク着用判定システムをリリース予定だと発表しています。こちらは「AI検温ソリューションSenseThunder」とは異なり、最初からマスク着用判定に主眼を置いたシステムです。そのため、上記のシステムとはまた違った場面での用途が想定されています。主に以下のような場所での導入が推奨されているので、ぜひ参考にしてください。
病院などの施設
病院へ来院される方や、施設に訪れる人のマスク着用状況をチェックしてくれます。特に病院は病気などで感染リスクが高まっている患者さんも多くいらっしゃるので、マスク着用判定システムのニーズが高いと言えるでしょう。
エレベーター
エレベーターもいわゆる「三密」に該当する条件を満たしています。狭いエレベーターにマスク着用判定システムを導入しておけば、未着用でのエレベーター使用を未然に防ぐこともできるでしょう。
自宅の玄関
自宅を出る時に、うっかりマスク着用を忘れてしまったことはありませんか? 自宅の玄関にマスク着用判定システムを導入すれば、マスクをつけずに外出しようとすると警告が発生するので、うっかり忘れて外出するリスクを防げるでしょう!
まとめ
今回はマスク着用を判定してくれるAIシステムについて解説・紹介を行いました。
コロナ禍の収束の目途が立たない現状において、感染拡大予防が求められています。マスクは自身の感染を防止すると同時に、咳エチケットなど他人への感染防止としても、世界中で注目されています。屋内においてはマスク着用が推奨されており、もはやマスク着用は新たしい生活様式の一部と言っても過言ではありません。
病院や大きな施設、人混みにおいては人力によるマスク着用判定が難しい状況です。今後は今回紹介したような、AIによるマスク着用システムの導入・普及が進められていくのではないでしょうか。