製造業のものづくりにおける課題をAiで解決

日本の製造業、ものづくりの現場では、近年AiやIoT技術の導入が広がりつつあります。また、それらを導入したことによる様々な成功事例も見られるようになってきました。しかし、実際製造業においてAiがどのように活用されているのか、結果としてどのような効果をもたらしているのかイマイチ分からないという方も多いのでないでしょうか。

そこで今回は現在の製造業が抱えている課題から、Aiを利活用した解決策までをご紹介していきたいと思います。

製造業における現状の課題

日本の製造業、ものづくりの現場では、人材不足や国際競争力の低下など様々な問題を抱えています。具体的な例としては、下記のような課題が挙げられます。

  • 人材不足
  • 品質の維持や向上
  • 製品の付加価値が低い
  • 国際競争力の低下

人材不足の問題については年々深刻化してきており、経済産業省が製造業にむけて2018年12月に行った調査によれば、人手不足は、94%以上の大企業・中小 企業において顕在化しているといいます。また、人材確保に課題のある人材として、特に『技能人材』が突出している現状です。

引用元:https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180712005/20180712005-2.pdf

この、技能人材が不足することにより、これまで品質など商品の評価を得てきたものが、その状態を保つことが困難になってきています。更には、単純にスキルを持った人材が他の人材と代替が困難であることだけではなく、新しい人材の教育や熟練スキルの保有ができないため、このような状況に陥っているのです。

人材不足こそが品質の低下を引き起こすことから、国際競争力の低下などその他の課題にもそれぞれ影響しているといえます。

製造業におけるAiの活用

製造業の課題として、主に上記の4点が挙げられました。その解決策の手段として活躍するのがAiです。特に中小企業では技能のデジタル化のニーズが強く、職人の匠の技そのものや、品質・技術力を裏打ちする良質なデータが現場に存在するうちに、将来 を見据えた対策を行うことが急務であるといわれています。

更に近年は、従来のAiよりも技術が確実に向上してきており、画像認識技術や分類エラーなどが劇的に改善されました。これを製造業に適用すれば、予測や画像認識が可能になり、不足していた人材をAiで補うことができるようになります。このことから、データの活用やAi技術を活用しようという経営者は増加傾向にあるといい、広がりつつあるのです。

製造業へのAiの活用

Aiを活用している製造業の中でも特にAiの導入割合の多かった分野は製造工程の21.7%です。一口に製造工程といっても多くの工程が存在しますが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2018年に発表した調査では製造業におけるAiの活用の可能性を次のようにまとめています。

引用元:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000119.pdf

上記で『生産工程の向上』としてまとめられている部分が製造工程のAi活用というところに値します。

作業の自動化

製造業における自動化は、現在Aiを搭載したロボットの開発も進められています。
Aiロボットに作業工程を学習させることで、人材を配置せずとも一定の生産量を保つことができ、ひいては生産量を2倍3倍と増やすことも可能です。
仕分けやトッピング、在庫管理など、ものづくりに関わる様々な作業が自動化されてきています。

検査、検品

Aiは画像認識という技術を持ち合わせています。これを活用することで、検査や検品の精度向上や業務の効率化を図ることができます。

この、検査や検品という工程は、ものづくりにおいて欠かせない工程ですが、わずかな傷や不具合も短時間で発見しなければなりません。また、万が一見落としてしまった場合は、企業自体の信用に関わる大きな自体にもなりかねないため、熟練の技が要求されてきます。しかし、いくら熟練のスタッフがいたとしても、人間のが行うことのできる作業にはやはり限界があるのが事実です。

この工程を、高速カメラで物体を撮影し、それをAiによって解析することで、検品作業や検査をすることができるようになります。実際に、東京大学とNECが共同でこの技術を開発ました。

NECは同技術の精度について、『カメラの前を0.03秒で通過・移動する物体について、刻印された5ミリ程度の微細な文字の違いを、リアルタイムで95%以上の精度で判別できること』を確認したとしており、今後製造業への導入の広がりが期待されます。

Ai研究員

また、製造業では研究開発の分野でもAi活用を進めています。例えば、Aiに何百何千という建築アイデアを学習させ、あらゆる可能性を網羅しながら新たなアイデアを作り出させるというものです。

もちろん建築物に限っての活用だけではありません。特に活用が進んでいるのが薬品製造業界です。薬品製造業界において新しい薬を作るには、莫大なコストと長期的な開発期間を要します。ところが、実際に、アメリカの企業では従来は開発に10年ほど掛かっていた抗HIV薬について、より効果が高いものをわずか半年で開発しました。Ai研究員によって研究、開発を行わせることで、技能人材の確保や時間的コストを大幅に削減することができるようになるのです。

このように、研究の分野においてもAiは人間の研究者にとって欠かせない協働者となりつつあります。これは製造業だけではなく、『Ai研究員』や『Aiデザイナー』等はあらゆる分野で見られることになるかもしれません。

製造業におけるAiの利活用のポイント

製造業において、様々な面で課題解決や業務の効率化を行うことができるとされているAiの技術ですが、ただ単に導入をすれば良いという訳ではもちろんありません。
現場での適用をリサーチするのはあくまでも人間の仕事です。

Aiは課題解決の手段であり、現在の課題はどの部分であるのか導入の目的を明確にすることが、Ai導入のヒントとポイントになります。

また、Ai研究員を設置する場合には、前提として『大量の良いデータ』があることも重要です。当然ながら良いデータがないとそれ以上のアイデアを作り出すことは困難です。これは研究の分野だけではなく、検品や検査においても同じことが言え、自動判断を行うための良いデータが大量になければ、AIによる学習が困難になる可能性が高いといえるでしょう。

まとめ

今後、多くの産業においてAiやIoT技術を活用して自動化が進んでいくことが予想されています。特に、Aiは人材不足やヒューマンエラーの防止など、様々なテーマに対して効果的な解決策をもたらしてくれます。しかし、それを乱用するのではなく、自社の課題を抽出してそこにアプローチできるような最適なAi技術を導入することが大切です。様々な導入事例を参考にしたり、社内で問題提起を行ったりしながら、それぞれにあった方法を模索していきましょう。