アニメの絵をAiが描くシステムが登場!アニメーターの仕事はどうなるのか

長年、アニメ制作におけるイラストは、アニメクリエイターの手によって描かれてきました。それが近年ではアニメ制作においてCG等だけではなく描画においてもAiが利用されるようになってきています。しかし、Aiといっても機械です。機械が何かを創造するというのは予想がつきにくいと思いませんか。

そこで今回は、アニメの絵を描画するAiアニメクリエイターについて詳しく解説していきたいと思います。

Aiアニメクリエイターの仕組みとは

そもそも、Aiとはこれまでのコラムでも何度かご説明してきたように、学習材料となる画像や動画などのデータがあれば、すべてを瞬時に読み込み、それらを学習することで新たなモノを作り出すことができます。Aiによるアニメクリエイターも同様に、人の手書きの描画をもとにAiがアニメとして着色したり、動きを加えたりなどして仕上げていくのです。

特に、シンガポールで開発されたアニメーション制作ソフト『CACANi』は、原画となる絵を人間が描くだけで、アニメの中で連続する『間の動き』の部分おw自動的に生成することができます。アニメ業界では中割と呼ばれる動きの連続性の部分を埋めていくことができるというわけです。この『CACANi』は日本のアニメ界でも2010年ころから導入されており、活躍しています。

『炎炎ノ消防隊』や『あんさんぶるスターズ!』といった人気作品にCACANiの名前がクレジットされることに気付いていた人もいらっしゃるのではないでしょうか。これらの作品の一部にCACANiの技術が活用されています。

更には、日本の企業でもAiを活用したアニメ制作が行われており、大部分は『CACANi』と同じで中割の部分と彩色の部分を担当することになっているようです。

アニメーション作成にAiを活用するメリット

現在、多くの業界で人手不足という問題がささやかれていますが、もちろんアニメーション業界も例外ではありません。

特にアニメ制作においては一つのアニメを制作するのに多大なコストが必要であるとされています。それは他の映像作品と比べて絵を描く部分で人員と時間的コストがどうしても多くかかってしまうからです。アニメ制作の予算は『人×時間』で大きく左右され、『人件費の塊』と揶揄されることもあります。

そこで、アニメーション制作においてAiを活用し、自動化できる部分と人の手を加える部分と分けてうまく利用することで、人件費や製作時間を大幅に削減することができるようになると期待されています。

Aiにできるのは『名アニメーター』のトレースのみ?

しかし、このようなアニメ制作におけるAiの活用で問題になってくるのはそもそもの、アニメの中で連続する動きを生成する際の『最初』と『最後』の部分を描くアニメーターがいなければならないという点です。さらに、Aiにより良いアニメーションを自動で作成できるようにするためには、技術を持った名アニメーターの画像等を大量に学習させる必要があります。

言ってしまえば、素人の絵をいくらAiに学習させても、Aiが自動で仕上げるアニメは素人でしかありません。というのも、AIは与えられたデータから最適解を見つけ出すことはできるが、AI自体が創造性を生み出せるわけでないからです。

・大量の名アニメーターの画が必要

そうすると、Aiにより創造性のあるアニメ―ションを自動で作成することができるように『教育』するには名アニメーターの作画データが大量に必要になってきます。そしてそれらの大量のデータをAiがディープラーニングすることによって、特徴的な動きなどをとらえることができるようになっていくのです。

しかし、そもそもこの『大量の作画データ』はどこにあるのか、どのようにして収集するのか、というのが問題になってくるでしょう。そしてそれをAiに読み込ませる時間的コスト等もかかってくるとなると、Aiを導入した後、費用的コストの採算が合うかどうかはしっかりと検討しなければなりません。

Ai導入でアニメクリエイターの仕事はどう変わるのか

近年では多くの産業の生産性向上としてAi導入が盛んになってきていますが、効率化を目指すあまり、既存の労働者の仕事を奪ってしまうといったことにもなりかねないというリスクが叫ばれています。ただ、アニメ制作においてAiが人間の仕事を奪うかそうでないかといえば、そうではありません。

というのも、『CACANi』のように、現段階ではもととなる絵や、複雑なキャラの動きは人間が描くしかないからです。つまりAiができることといえば、着色や、単純な動きやルーティン的な動きの描写のみであるというわけです。簡単な作業をAiシステムに置き換えることができれば、時間と手間のかかる難しい作画の描写や、創造性が必要な仕事にアニメーターが打ち込むことができるようになるといったメリットもあるでしょう。

・現段階でAiに独創性や創造性はない

更に、従来から絵作りはアニメ―ターのクリエイティビティや技能に依存していることから、デジタル化やシステムに置き換えるといったことは難しいとされてきました。クリエイティブ自体はAiのような自動化のシステムだけでは生み出すことができません。そしてアニメーションは、そもそも創造性を基盤とした表現ですので、単に絵を動かすだけでなく、現実には存在しないキャラクターやメカニック、美術、アニメーションの動き、演出、世界観が観る人々を感動させます。全てゼロから生み出す創造性こそが作品の基盤にあるというわけです。

ただ、近年では1から音楽を作ることができるAiが出てきているなど、多くのデータを学習したことによって高度な技術を持ち合わせているAiも登場し始めています。現段階ではアニメーション作成においてAiに独創性や創造性はないとされていますが、今後はAiが1からアニメを制作し、人間が手直しをするといったアニメも登場してくるかもしれません。

まとめ

今回は、Aiとアニメクリエイターの今後について解説いたしました。従来から芸術などのクリエイティブな能力が必要な仕事についてはデジタル化することはできないとされてきましたが、少しずつこうした業界にもITが侵食してき始めています。

現段階では、Ai自体に独創性や創造性がないとされているため、単純な作業をAi、重要な作業を人間という風な割り振りを行っていますが、今後Aiの技術が進歩した際はこれ限りではなくなる場合ももちろんあります。そうなったときに、人間は、どの部分をAiに任せて、どの部分を人間が行えばより効率的でより良いものが作成でき、どちらもにも悪影響を及ぼさないかなどを考えていかねばなりません。

Ai技術が発達して人間の生活や仕事が効率化されるのは結構なことですが、アニメーションもしかり、人間とAiがうまく共存していくには役割分担が重要な分岐点となるでしょう。