中国のAi技術は何故進んでいるのか?その理由とは

中国のAi技術の発達スピードには、目を見張るものがあります。

都市部への「スマートカメラの導入」や「無人店舗の普及」などは、中国国内におけるAiテクノロジーを活用した社会的な取り組みの最たる例と言えるでしょう。

今回は、中国のAi技術がなぜこれほどまでに急速な発展を遂げているのかや、中国国内におけるAiの必要性などに焦点を当てて、解説を進めていきます。

中国のAi事情

中国国内におけるAiの社会実装が本格化するようになりました。

すでに都市部では、Aiを搭載したスマートカメラがあちらこちらに設置され、静止画や動画のディープラーニングを通して、全体の犯罪率の低下や違法行為の検出に役立てられています。

AiやICTの技術を活用した監視システムの構築は、必ずしもメリットだけではありません。Aiの分野において難しい部分は、Aiシステムそのものの開発はもちろんのこと、開発したシステムを社会システムに実装させる”実装力”の部分です。

開発力や技術力の面に関して言えば、中国と比肩する先進国家は存在します。しかしこうした実装力の面においては、ほかの先進諸国と比べた場合でも、頭ひとつ抜きん出ていると言えるでしょう。

中国でAiが必要な理由

Ai技術の発達が進む中国国内ですが、中国におけるAiの必要性とは一体どのようなところにあるのでしょうか。

政府の政策

まず1つ目としては、2015年に中国政府が掲げた「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」という国家プロジェクトの存在が挙げられます

このプロジェクトは、中国国内の製造業における、今後10年間のロードマップを示したもの。
第一期(2025年から2035年)、第二期(2035年から2045年)、第三期(2045年から2049年)の合計三段階のステップを経て、中国建国100周年の2049年までに、世界の製造大国としての地位を確立させようという一連の取り組みです。

また、2017年には、上記の国家戦略を補完するための「次世代AI発展計画」が発表されたということもあり、中国国内におけるAiの重要性は今後ますます高まってくると言えるでしょう。

人口問題

中国国内で懸念されている人口減少の問題も、中国Aiの発達が加速している大きな要因のひとつと言えるでしょう。

人海戦術という言葉の通り、14億人もの莫大な人口を抱えるようになった中国。しかし国連の推計によると、2027年ごろにはインドに逆転され、2028年ごろには14億4200万人をピークに減少に転じる見通しで、そこからは「苦難の時代」に直面すると予想されているようです。

近い将来、人口減少による生産能力の低下が懸念されています。そこでAiやICTの技術を活用することによって、機械を用いた既存業務の自動化や労働力の確保のために、先手で対策を打っていこうとする目論みがあります。

世界との競争

Ai開発における競争が世界規模で激化しているということも、中国国内のAiが発達している理由のひとつです。

ドイツの国家プロジェクトである「インダストリー4.0」の存在や、アメリカの民間企業であるゼネラル・エレクトリック社による「インダストリアルインターネット」の存在などはその最たる例と言えるでしょう。このように、近ごろでは世界各国でAiのビジネス活用やICTによる既存ビジネスのデジタル化が盛んになってきました。

中国の大手Ai企業

アメリカでは「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)」をはじめとする先端企業が、率先してICTによるイノベーションや、Aiの開発に取り組んでいるイメージですが、中国国内にもAiを強みとする複数の先端企業が存在します。

中国国内のAi主力企業5社、通称「BATIS」は、中国政府の定めた「国家AI戦略実現のためのプラットフォーム」に指定されており、各々の領域でのリーディングカンパニーとしての役割が期待されるようになっています。

BATISとは、Baidu(自動運転の分野)、Alibaba(スマートシティの分野)、Tencent(医療における画像認識の分野)、Iflytek(音声認識の分野)、Sense Time(顔認識の分野)の5社のイニシャルから呼ばれている通称で、中国国内のAi主力企業5社を指すものです。

そのなかでも、AlibabaとTencentの2社は特に大きな企業として近年注目を集めており、両社の得意とするスマートシティ技術と医療における画像認識の技術などは、世界各国でさまざまなサービスへの活用が進められています。

中国にはAi専用の学校がある

Ai教育を強化するための、Ai分野に特化した専門学校も設立されるようになっています。

中国科学院自動化研究所による「AIとロボット教育共同実験室」はそのなかのひとつで、小中学生や専門学校生に向けて、Aiの仕組みやその技術の活用方法などを教育します。今後発展していくスマート社会への柔軟な適応力を身につけさせる意図があると言えるでしょう。

まとめ

先進国家によるAiの開発競争は、日に日にその過激さを増しています。

中国国内においても、Aiの分野における圧倒的なまでの実装力と、人口増を生かした開発能力という二つの強みは、世界的に見ても驚異的な存在と言えるでしょう。

国家によるAi技術の独占などは、貧富の格差を助長させる危険性があるため、どこかひとつの国だけが突出することのないよう、今後も健全な開発競争によるAi技術の発展を期待したところです。