Aiによる動画の高解像度化技術で、無人店舗の開店促進へ

少子高齢化が進む日本にとって、飲食店や小売店での人手不足が悩みの種となっています。

そんな中で問題を解決する手段として注目されているのが、AIを利用した無人店舗です。国内外を問わず無人店舗の実証実験が行われているのをご存知でしょうか。今回は既に存在する無人店舗も事例を紹介していきます。また無人店舗には、防犯カメラや防犯システムの存在が欠かせません。無人店舗を実現する上で必要なカメラやシステムも一緒に紹介させていただきます。AIやカメラをどうやって無人店舗に活用していくのか見ていきましょう。

無人店舗とは

無人店舗とはAIやキャッシュレス決済などのノウハウを活用し、レジスタッフがいなくても買い物が行える店舗を指します

とくにコンビニなどの小売店を中心に実証実験が行われ、普及が広がると予測されているのをご存知でしょうか。無人化された店舗では、主に入店時の認証システムと退店時の決済システムで管理されます。無人店舗が実現されれば人件費をかなりカットできるでしょう。さらに顧客の購入データを正確に集められるので、マーケティングにも活用できます。既に国内外を問わず実証実験が行われている無人店舗。有名な事例について見ていきましょう。

Amazon Goの例

2018年1月、アメリカのシアトル1号店で無人コンビニ「Amazon Go(アマゾンゴー)」が一般向けにオープンしました。日本では無人コンビニと呼ばれるAmazon Goですが、実際の店舗では従業員が働いています。従来のような支払いを行わずにお買い物が完了するので、レジレスと考えるのがより正確と言えます。Amazon Goでは、以下のようなステップでお買い物をすることになります。

・スマホにAmazon Goのアプリをダウンロードする。

・入店時、QRコードをスマホに表示させゲートで読み取らせる。

・棚から商品を取り、バックに入れる。

・退店時、ゲートでQRコードを読み込ませる。

これでお買い物が完了します。店舗を出るとスマホにレシートが届き、クレジットカード決済が行われます。普通のコンビニとは異なり、ショッピングカートやレジがありません。Amazon Goの店舗では、無数のカメラとセンサーが設置されており、AIが商品購入状況をチェックしています。

またシアトルに続いてオープンしたサンフランシスコの店舗では、圧力センサー、重力センサー、マイクが商品棚に設置されているようですね。圧力センサーにより、顧客が商品を触ったかどうかが確認されます。さらに棚から商品が動いたかどうかは、重力センサーがチェックします。そしてマイクが音を検知して商品が動いたかをチェック。カメラの画像解析を組み合わせれば、顧客の購買状況をより正しく判定できるようになるでしょう。

日本の無人コンビニの例

日本でも無人コンビニの実験が始まっています。まだ実験段階のところも多いですが、今後は無人店舗が普及していくと予測されています。たとえば以下のような事例をご存知でしょうか。どの店舗もまだ実験段階ですが、実証実験は着実に進められています。

ローソン氷取沢町店

2019年8月23日から半年間に渡り、横浜市のローソン氷取沢町店では午前0時~午前5時の深夜時間帯に店舗を無人する実験を行ないました。実験中は顔撮影か、アプリのQRコードまたは入店カードのQRコードをドア付近にある機器にかざすことで入店できる仕組みとなっていました。好きな商品を選んだらスマホレジまたはセルフレジでスキャンすれば支払いが行えます。実験期間中は店内に設置されているカメラがユーザーの行動が記録し、サービス改善に活用されました。

JR赤羽駅のキヨスク

2018年10月17日から約2ヶ月に渡り、JR赤羽駅のキヨスクも無人化されました。こちらは入口のスキャナにSuicaをかざすとドアが開いて入店できるようになる仕組みです。商品を選んだ後は、出口で再びSuicaをかざせばお買い物が完了し、退店できるようになっていました。商品は鞄に入れても認識されるので、防犯面でも優秀と言えますね。同時入店は3人までに制限されましたが、おかげで商品や顧客の認識の精度が向上しました。ただし来店人数が多くなると認識率が低下するという問題もあり、今後の課題と言えるでしょう。

ROBOT MART 日本橋店

ロボットマートは日本初の無人路面店舗です。日本橋に1号店があり、主に菓子類や飲料商品が販売されています。店内には店員はおらず、ロボットが接客を担当しています。

店内には監視カメラが設置されており、万引きなどの犯罪が起きないよう監視されています。お買い物方法はとても簡単で、購入したい商品を読み取りカメラが設置されている台に置くとモニターに金額が表示されます。QRコード決済で支払いを完了させてください。現在は「PayPay」または仮想通貨イーサリアムに対応している「ロボットマートチャレット」で支払いが行えます。

無人店舗にはAI搭載の防犯カメラが必須

無人店舗には万引きなどの防犯対策が課題として残されています。現在ではAIを活用することで防犯システムの精度を高め、問題を解決しようという動きが高まっているのをご存知でしょうか。昨今の主流は防犯カメラとAIを組み合わせて展開する試みが見られています。

実現するには十分な数のカメラと防犯システムが必須となり、AI技術の利用も欠かせません。たとえば監視カメラなら歩行認証、バイオメトリクス用カメラなら虹彩や指紋などに対する生体認証など。カメラで撮影した画像や映像に対して、AIを使ってさまざまな認識処理を実行する必要があります。

上記で紹介した通り、現在主流の無人店舗ではQRコードや専用アプリなどを使って買い物が行われます。入店者にカメラで撮影され、画像解析AIを利用した顔認証技術で会員情報と紐付けられ、お買い物が進んでいくでしょう。また店内に設置されたカメラが顔と商品情報とを紐付け、会員の購入予定リストに商品の種類と数が追加されていきます。退店した瞬間に商品が購入したと見なされ、会員情報に登録されているクレジットカードにて自動決済が行われます。この仕組みを実現し、トラブルや万引きなどを未然に防ぐためには、高精度のカメラの存在が欠かせません

撮影した動画の高解像度化

無人店舗で顧客がスムーズに買い物をして、トラブルを防止するには鮮明で解像度の高い映像・画像が必要となります。被写体に大きな個体差があると、それぞれのカメラ・モジュールで撮影した画像の色味や明るさなどが異なってしまうでしょう。同じ被写体を撮影した場合でも、機器ごとに得られる画像に違いが生じれば、AIによる画像認識の結果が変化してしまうかもしれません。そんな事態を防ぐためにも、撮影した動画を高解像度化するシステムが必要となります。

高解像度化できるシステム

日本のベンチャー半導体メーカーであるザインエレクトロニクスでは、カメラ開発キット(CDK)と CAO(Camera Application Option)を組み合わせたソリューションが用意されています。

CDKを用いれば、プログラミング作業をほぼ実行することなくファームウエアを開発できるようになります。個体差情報の補正に向けたISPファームウエアについて、その大部分を開発できるようになるでしょう。一方CAOは、CDKと組み合わせて使用する「アドイン・ツール」の位置付けです。さまざまなアプリケーションに合わせた個体差情報の補正や、

微妙な画質の味付けを実現できるようになります。

ただしアプリケーションごとにCDK+CAOに対する要求が異なります。CDKはすべてのユーザーが共通して使えるツールですが、CAOはユーザーごとに求められる仕様が異なるでしょう。ザインエレクトロニクスは、カメラ・モジュール搭載のカメラ・システムを開発するメーカーや、開発作業を請け負う独立系設計企業に対してISPと共に提供しています。 

さらになる高セキュリティで無人店舗促進に

4Kや8K映像で撮られた映像も、引き延ばすと画質が落ちてしまう場合がありますよね。そんな時も高解像度化できるシステムを導入しておけば、万が一犯罪が起こった時に犯人の早期特定に繋がります。

たとえばAIベンチャーのラディウス・ファイブは、2020年2月19日よりディープラーニングを活用した高解像度に変換できるサービス「AnimeRefiner」(アニメリファイナー)の提供を開始しました。こちらは低解像度と高解像度の動画を学習したAIが高解像の状態を予測して、動画のノイズなどを取り除いてくれるシステムです。狙いとしては4K・8Kのコンテンツ制作にかかる時間、費用、工程数など制作現場の負担軽減が掲げられています。

これまでの技術とは、引き延ばした動画を中間で補完するものでした。そのためノイズもそのまま引き延ばされ、ぼやけが発生してしまいました。しかしAnimeRefinerならノイズを除去してぼやけを鮮明化してくれます。これまでの課題だった事柄が解決されていくでしょう。AnimeRefinerはアニメーション向けのサービスですが、今後の進化が他業界からも期待されています。既に静止画ではAIによる補正・高画質化ツールも多く登場しています。4K・8K映像といった領域でも、今後の期待度は高いと言えるでしょう。

 まとめ

慢性的な人手不足が悩みの種である昨今、世の中は店舗の省人化・無人化へと進んでいます。実験も既に何件か行われており、今後はますますこの流れが加速していくでしょう。

無人店舗を実現する上で外せないのが、AI技術と防犯カメラ・防犯システムの存在です。無人店舗には万引きなどの防犯対策や、認証システムの正確性といった課題もまだまだ残されています。しかしAIを利用した動画の高解像度化技術により、無人店舗開店へのハードルは下がっていくでしょう。