NECがAiの活用でコロナワクチンの設計情報を解析!?Ai活用による医療業界の変化

現在コロナウイルスの影響で外出自粛を余儀なくされています。コロナウイルスの感染拡大をどうにか食い止めるには有効的なワクチンが開発されるか、集団免疫を獲得するかのどちらかであるといわれているわけですが、こうして現在外出制限をしている以上、集団免疫はつきにくいと考えてよいでしょう。そうすると、有効的なワクチンが開発されるまで、現在のような生活を断続的に続けていかなければ流行を最小限に抑えることはできません。
そうした中、先日NECがコロナウイルスのワクチンの設計に向けて、Aiを活用した遺伝子解析の結果を公開したことを発表しました。
本記事ではNECによる、コロナウイルスワクチン設計ではAiがどのように活用されたのか、またAiを活用することで医療分野はどのように変化することが予想されるのか、という点について言及していきたいと思います。
NECが行ったAiによる解析
NECは4月23日にオンライン記者説明会を開き、Ai解析を用いたコロナウイルスのワクチン開発を進めていることを明らかにしました。今回のAiによるコロナウイルスワクチン開発はNECがかねてより進めていた『がんワクチン』の開発技術やノウハウを応用したもので、一刻も早いコロナウイルスの診断や治療、予防手段が求められる中、医療品開発の動きが通信分野へも広がってきています。
Ai解析で抗原の特定に成功
同ワクチン開発研究については、NEC OncoImmunity ASがNEC欧州研究所と協力して研究チームを立ち上げ、実施されました。NECのAi予測技術でコロナウイルスのゲノム配列、いわゆる遺伝子の配列を解析し、世界中の人々にもっともよくみられる100個の免疫の型に対する攻撃の標的である抗原の特定に成功したといいます。
薬の有効性と有毒性をAiで解析
コロナウイルスのワクチン開発研究については、世界中の多くの企業が着手しており、中には実際に治験を進めている企業もあります。Beyond Healthレポートによるインタビューによりますと、そのワクチン開発において、たんぱく質を抗原として利用しているものが多いのだそうですが、有効性や有毒性については懸念材料もあるといいます。つまり、タンパク質のみをターゲットにしたワクチン開発では、失敗してしまう可能性もあるということです。
そこでNECは、たんぱく質に固執して研究を進めるのではなく、Aiを用いた解析にシフトし、ワクチンとして応用可能な抗原候補をウイルスの持つたんぱく質全体に広げるという新しいアプローチを進めています。
Aiによる創薬が進んでいく
NECは今後、ワクチンの研究開発を手掛ける製薬企業と協業し、新型コロナウイルスワクチンの抗原の選定に、今回のAiによる予測技術を活用したい考えを示しています。
このように、今後はAiシステムを開発する企業と、製薬企業などこれまで通信システムとの縁が少なかった企業についてもますますタイアップしていくことが予想されます。Aiはこれまでのコラムでもご紹介してきたように画像解析や分析、大量の情報をデータ化し、それらのデータから予測したりする技術を持ち合わせています。
そうすると、NECが今回行っているコロナウイルスのワクチンのように、Aiを活用して情報収集をし創薬を行っていくという取り組みは今後増えていくはずです。
人間がこれまで数十年も時間をかけて行ってきた創薬がわずか数年で行うことができる未来もそう遠くないかもしれません。
今後は治療法の選定などにもAiが利用されるかも
そして、このコロナウイルスが現在蔓延してしまっている理由の一つとしてあげられるのは、有効的なワクチンがない他、有効的な治療法が見つかっていないという点です。しかし、創薬にAiを利用することで早期にワクチンを開発することに成功することができたとすれば、治療法の選定にもAiが利用されることになる可能性もあります。
実際に、米バイオテクノロジー企業のアトムワイズは、特許を取得したAiシステムを使って、どの癌治療薬がより効果的で安全かを予測する手法を確立しようとしています。効果的で安全な治療薬がどれかを選定するAiシステムが開発されれば、いずれ効果的な治療法を選定するAiシステムも利用され始めてくるでしょう。
あくまで可能性の話ではありますが、医療にもAiが活用されることで、Aiの予測技術、画像選定技術などを用いれば、これまで人間が多くの時間をかけて行ってきたことが少ない時間で解決されるようになるかもしれません。
まとめ
今回は、NECが行っているAi解析を活用したコロナウイルスワクチン開発について解説するとともに、Ai活用による今後の医療分野の発展について言及してまいりました。
現状ではコロナウイルスに有効的なワクチンは発表されておりません。実際、現状の技術では新薬ができるまでに約15年ほどかかるともいわれております。今回、このようにAiを活用することでどのくらいこの期間が短縮できるのか、期待したいところです。
今後医療分野においては、確実で効果的な治療法の選定や、それこそ創薬においてもAiの活用がますますひろがっていくのではないでしょうか。もっとも、Aiが得意とするものは、大量のデータ分析や、それらのデータを基にした未来予測です。これらが効果的に活用されれば、『Aの治療を行った場合の1年後』『Bの治療を行った場合の1年後』などを比較して可視化することもできるようになるかもしれません。
ともあれ、現在は新型コロナウイルスの一刻も早い収束と、効果的な治療法が発見されることを願うばかりです。