Ai人材育成策『AI Quest』とは?

日本では中小企業の約7割が人手不足であるといわれています。これまでも、人手不足問題に関しては、コラムでAiが人間と同様に働くことで、人権費を削減できたり、作業効率をアップすることができたり、というところに焦点を当てて解説をしてきました。

一方で、人手不足問題が拡大している理由としては、『優秀な人材が育たない』『教育者がいない』等も挙げられます。要は、仮に人手として名乗りを上げたものがいたとしても、その人材が企業において役に立つか立たないかは別問題であり、即戦力となり得ないために新しい人材として迎え入れることができないといったことです。そうして、教育者もおらず、人材も育たなければ企業として成長したり前に進んだりすることもできずにいずれ廃業、後継者不足、、といった問題を抱えかねないということになるわけです。

そうした中、近年ではAiの実装や普及につなげる『Ai人材』の開発が進められています。そこで本記事では、経済産業省が推進するAi人材育成策『AI Quest』について解説してまいります。

経産省が推進する『AI Quest』とは

AI Questとは経済産業省が推進するAi人材育成のための事業です。Aiが人材不足の解決を目的とし、2019年に発表された「AI戦略2019」に基づいて策定されました。

AI Questは『ケーススタディを中心とした実践的な学びの場』であると位置づけられており、従来の人材育成の手法とは違って、企業の実際の課題に基づくケーススタディが提示され、参加者同士が互いにアイデアを出し合い、試し、学び合うのが特徴です。そのことを通じてAi活用による課題解決方法を学ぶと同時に、実際のプロジェクトに関わることで得られる『知恵』を身につけていきます。

AI Questが誕生した背景

AI Questは人材の不足を解決するという目的で誕生しました。近年、Aiの技術は、通信技術の進歩もあり驚異的なスピードで発展を続けています。しかし、その一方で、日本はAi関連技術者の数はもちろんのこと、Aiに関する基礎的リテラシーを習得している学生の数もまだまだ足りていない状況です。Ai先進国ともいわれる中国はAi分野を専門的に学習できる環境が整っており、Ai技術の発展も世界各国と比べてもスピードが早い現状となっています。それだけ、教育者が集まっているということですし、教育をするためのデータがある、そして、学べる環境があるというこ都になります。

政府が提言する『AI戦略2019』は、Ai人材を育てるための『教育改革』を第一の戦略目標に設定し、次に産業闘争力を強化するための『社会実装』につなげていくことを次の目標としています。具体的には、2025年までにデータサイエンス・Aiを理解し、各専門分野で応用できる人材を年間25万人育てること、データサイエンス・Ai駆使してイノベーションを創出し、世界で活躍できるレベルの人材を2,000人発掘・育成することなどを掲げています。

AI Questはそれを踏まえた新たな形での産業政策です。AI Questの目的、そして開発された背景は人材不足の解消、そして人材育成を通したAi実装を実現することの2つです。Ai人材を育て、それをAIの実装・普及につなげることが重要な課題であり、目指すべきゴールだと示されています。

Ai人材を育成するメリット

Aiは人に代わっていろいろな業務を行うことができる非常に優秀な最新テクノロジーの一つです。では、Ai人材を育成し、Aiの普及を促進するメリットとはいったいどのようなことがあげられるのでしょうか。

人手不足の解消

まずは、Ai人材を実現する目的の一つでもある、人手不足の解消ができるという点です。人手不足が解消されれば、おのずと、日本の中小企業の7割が抱えている悩みが解決されます。つまり、人手不足による廃業などが実質的になくなるでしょう。

Ai普及につながる

Aiの知識を持った人物が多く存在するようになればおのずとAi機器も幅広い業種で利用されるようになるでしょう。そうすると、これまでAi等のテクノロジーと縁のなかった企業もAiを取り入れるきっかけとなり、Aiが爆発的に企業に普及する可能性もあるかもしれません。

新しい業種の誕生

先ほど冒頭部分でも申し上げた通りに、中国にはAiを専門に研究している人材が多いためにAiの普及が早いとされています。日本でも同様にAi人材が多く現れれば、Aiを利用した新しい業種等も誕生することとなるかもしれません。

Ai人材の育成に向けた課題とデメリット

とはいえ、Ai人材を育てる手法の一つとして、課題解決型学習(PBL:Project Based Learning)が有効であるとのコンセンサスが得られつつあります。例えばNECはAi人材の育成にPBLを採り入れており、『座学によるAi研修だけでは、ビジネスの現場で活躍できるAi人材を育成できないことが分かってきた』(NECの孝忠大輔AI人材育成センター長)としています。

要は、Ai人材一人を育てるのに、1人の教師がつかなければならないということです。その点、Ai人材同士が自ら課題を求め、解決していくような新たな成長方法を確立させていかなければなりません。

そういった環境を整えたり、Ai人材を育成して、企業はどのようにAiを利用していくのか等、プロセスを構築しておく必要があるといえるでしょう。

まとめ

日本もだんだんとAiの普及が進んでいっているとはいえ、やはり世界各国の進捗状況には劣る部分があるものです。それは何よりもAiに関して知識のある人材が少ないこと、専門的に勉強するような施設があまり存在しないことが1つの要因としてあげられるのではないでしょうか。

しかも、先日わが国では『スーパーシティ法案』といって、Aiなどのテクノロジーを利用した便利な社会を実現するための法律が可決されました。今後さらにITやAiなどのテクノロジーが多くの場面で利用されていくことになるでしょう。

Ai人材の育成はもちろんのこと、Aiについては一般人も基礎知識としてあたまにいれておく必要がありそうです。